鬼面山の登山口となっている峠です。
大鹿村側からも遠山郷側からも行くのがちょっと遠いのが難点。
でも鬼面山登山はとてもお勧めできるので、そのついでに訪れたい場所です。
地蔵峠(一、三三○㍍)は、大鹿村青木川と上村程野川の分水嶺に位置しており、信仰の道や塩の道である秋葉街道の、中央構造線の中央谷にある、青崩峠や分杭峠と並ぶ難所の峠であった。
大鹿村から、青木川沿いに両側に迫る山肌を見ながら、九十九折の秋葉街道を登りつめると、上村との村境西側に、旅人の安全を祈願した「お地蔵様」が立っている。
峠から登ってきた道を振り返ると、大鹿村大河原やはるか分杭峠を、一直線に望むことができる。また、峠の中腹の安康地籍には、日本の外帯と内帯を分ける構造線の露頭があり、地理学や地質学を学ぶ人びとのみならず、日本最大の断層線である中央構造線のすばらしさを満喫させてくれている。
信州百峠 (出版 – 郷土出版社 1995年) 170頁より引用
地蔵峠はそのまま登山口になっています。
峠の名の由来となっている地蔵菩薩像。
半殺し皆殺し
本当にあったという話ですが。この大河原からずうと行った向こうに、遠山って所があるが、地蔵峠をこしていくと暗くなってしまった。すると灯がともっていたもんで、あの家に泊めてもらおうかって相談して、そこを訪ねたんだと。 「旅の途中で困っているから」って言ったら、
「ああ、そんじゃ何もないけど、泊まっていきゃいい」って、許可が出たと。そこへ寄って、そして座敷かどこかへ泊まっていたら、隣の部屋の方で、小僧だか下男だかと家の主人が、話しとんのが聞こえてきたんだって。
「今夜は半殺しにしますか、皆殺しにしますか」とかなんか言うたてんだね。それをこっちで聞いたもんで、
「こりゃ、みんな殺されちゃうか、半殺しにされちゃうか」って。そこで、そおっと家の人の目をかすめて、あわてて逃げだしたんだって。殺されたらかなわないって。
そんで、あとから聞いたところ、おはぎを作って、うんとつぶしたのを皆殺し、半分つぶしたのを半殺しっていうんだって。その家じゃおはぎを作ってごちそうしようと思ったんだって。ところが泊まった人たちは、半殺しだとか皆殺しだとか、すごいことを言うもんで、殺されちゃうと思ってな、こっちの大鹿村から行った人たちは、逃げだしたって。後で聞いたらそいうことだったというので、笑い話になったねって。
ふるさとお話の旅6巻 長野 南アルプスふもとの語り
(出版 – 星の環会 2005年) 36-38頁より引用